クマバチとは?その生態や巣の駆除方法・注意点を解説
日本では春先~秋にかけて遭遇することの多いクマバチ。体が大きく、ブンブンとうなるような羽音がするので恐怖の対象とされていますが、その生態や特徴をくわしく知っている人は少ないのではないでしょうか。
今回は、クマバチの特徴や生態、危険性とともに、クマバチの巣を見つけた場合の対処法についてくわしく解説します。
目次
クマバチとは?
クマバチとは、ハチ目ミツバチ科クマバチ属に属する昆虫の総称です。日本では本州・四国・九州・屋久島などに分布しており、体長は22mm前後、大きいものになると30mm近くに育つものもあります。
花粉や蜜を蓄えるハナバチの一種で、これまでに約500種類が発見されていますが、このうち日本の在来種にはクマバチ、アマミクマバチ、オキナワクマバチ、アカアサイセジロクマバチ、オガサワラクマバチの5種が挙げられます。
単純に「クマバチ」というときは、最も広く分布する「クマバチ」を指すことが多いので、本記事でも「クマバチ」について説明します。
なお、地方によっては方言で「クマンバチ」と呼称するところもあります。
クマバチの見た目の特徴
クマバチの体は全体的にずんぐりとしており、体は黒色ですが、胸元だけ黄色くてふわふわした毛が密集しているところが特徴です。
全身が黒くて体毛が多く、かつ体が大きいところが熊に似ていることから「クマバチ(熊蜂)」と名付けられました。
オスはさらに頭部に淡い黄色の三角紋があり、複眼同士の幅が狭くなっていますが、メスには三角紋がなく、複眼同士の幅も大きいので、同じクマバチでも雌雄で顔付きが大きく異なります。
羽根も体と同じように黒色ですが、よく見るとやや紫がかっているのがわかります。
クマバチの生態について
クマバチは、幼虫にエサとして与えるために花粉や蜜を集めるハナバチの一種ですので、サクラやツツジ、キリ、フジ、ウツギなどの花が咲いている周辺でよく見かけます。
ミツバチ同様、花から花への受粉を助けることもありますが、口吻が短く、花の種類によっては蜜まで届かないため、花の根元に穴を開けて蜜だけを吸う「盗蜜」と呼ばれる行動を取るパターンも多く見られます。
クマバチは4~6月に1回、8~10月に1回と、一年に2回子育てを行いますが、繁殖期を迎えるとオスは空中でほとんど動かずに飛び続ける「ホバリング」を行いながら、メスを探すという行動を取り始めます。
縄張りに入ったものを見つけると、メスかどうか確認するために近づきますが、メスでないとわかると離れ、再びホバリング状態に戻ります。
一方のメスは、木の幹や木造住宅などに穴を掘ったうえで、縦穴の巣を作り、その中に花粉や蜜を集めます。
一度巣を作ると、その年だけでなく、毎年同じ巣穴を使う習性があるため、気になる場合は駆除する必要があります。
クマバチの危険性について
クマバチは体が大きく、かつ羽音が大きいので「怖い」というイメージを持たれがちですが、見た目とは裏腹に性格は温厚で、何もしなければ人を襲うことはありません。
繁殖期のオスの場合、縄張りに入ると近寄ってきますが、前述の通りメスかどうか確かめるための行動であり、人だとわかると興味を失って離れていきます。
そもそもオスには人を刺すための針がないため、人に害を与える心配はないといわれています。
ただ、メスは巣や卵、幼虫を守るための針が備わっているため、手でクマバチをつかもうとしたり、払ったりしようとすると攻撃されることがあります。
スズメバチに比べると毒性は低いので、重症化するリスクは少ないですが、人によってはアナフィラキシーショックを引き起こす可能性がありますので、特に一度刺された経験のある方は注意が必要です。
もちろん、刺された時の痛みもかなり大きいので、不用意に巣へ近づいたり、クマバチを攻撃したりするのはやめた方がよいでしょう。
クマバチの巣の特徴・構造
蜂の巣というと、六角形を複数並べた「ハニカム構造」のイメージが強いですが、クマバチの巣は前述の通り、木の幹や木造住宅に縦穴を開けて巣を作ります。
クマバチは、女王蜂や働き蜂がいて一種のコミュニティを築いているミツバチとは異なり、基本的に単独行動を行うため、穴の直径もクマバチの成虫とほぼ同じくらい(約2cm)しかありません。
一方、全長は30~40cmほどあり、メスはその中で複数の個室を作り、ひとつひとつの部屋に卵を産み付けていきます。
巣穴を作るときは、木をかみ砕いて穴を開けていくので、基本的に柔らかい材質の木を好む傾向にあるようです。
たとえば、森林にある枯れ木や竹、倒木などが格好の場所として利用されますが、街中では家や店舗がターゲットにされることもあります。
ミツバチのように、目に見えるところに大きな巣が形成されるわけではないため、知らない間にクマバチが巣を作っていたというケースも多く見られます。
クマバチの巣を放置するリスク
クマバチは人に直接害を与える存在ではありませんが、巣作りの際に建物の枕木や柱、屋根を支えるための垂木などに穴を開けるため、家屋に大きな被害をもたらします。
最初のうちは巣穴の規模も小さめですが、毎年同じ巣穴を使う習性があるため、クマバチの巣を長年放置していると、穴が広がって基礎の部分に甚大な被害が出る可能性があります。
クマバチの巣は家一軒につき一つとは限らず、あちこちに複数の巣を作られてしまうこともありますので、放っておくと住宅の強度が低下し、大地震や台風に見舞われたときに倒壊や崩壊を招く原因となります。
また、クマバチに開けられた穴からシロアリが侵入するなど、二次的な被害に見舞われるリスクもゼロではありません。
巣穴の入口となる穴は直径1~2cmほどと小さく、ぱっと見ただけではわかりづらいので、家の周辺でクマバチを見かけたら、家の外周を見回って小さな穴が開けられていないかどうかチェックしましょう。
クマバチの巣の駆除方法
クマバチの巣は、必要な道具をそろえれば自分で駆除することも可能です。
以下に、クマバチの巣を駆除する際に必要なアイテムをまとめました。
1. 防護服
2. 軍手+ゴム手袋
3. 長靴
4. ゴーグル
5. タオル
6. 帽子
7. 赤色のセロファンを貼った懐中時計
8. ゴミ袋
9. ほうき+ちりとり
10. 殺虫スプレー
11. 木工用パテ
クマバチは温厚な性格ですが、巣に攻撃すると反撃してきますので、防護服は必須です。なければ厚手の作業服上下+レインコートで代用することも可能ですが、クマバチが服の中に入らないよう、首元や袖口、裾はしっかりガードします。
なお、クマバチの駆除は夜間に行いますが、普通の懐中電灯の光を当てると警戒されるおそれがあります。クマバチは赤い光を認識しづらいので、事前に発光部へ赤いセロファンを貼っておきましょう。
昼間のうちにクマバチの巣の場所を確認したら、夕方以降、日が落ちた時間帯に防護服を着た状態で巣穴に近づきます。いつクマバチが出てきても良いよう、殺虫スプレーをかまえながらゆっくりと距離を詰めていきます。
もしクマバチが出てきたら、すぐに殺虫スプレーを噴射して撃退します。
巣穴に近づいたら、入口から巣穴に向かって殺虫スプレーを15秒ほど拭きかけます。クマバチが出てきても焦らず、そのまま噴射を続けましょう。
クマバチが出てこなくなったら、細い棒などを使って巣穴から死骸を取り除き、ほうきとちりとりで集めてゴミ袋に入れます。
クマバチを駆除したら、巣穴の入口を木工用パテでしっかり塞ぎます。
以上がクマバチの駆除方法ですが、住宅の建材に巣を作られた場合は、外観だけでは被害の状況がわかりづらいので、リフォーム業者などの専門家にホームインスペクション(住宅診断)を依頼した方がよいでしょう。
クマバチの巣を駆除する際の注意点
クマバチの巣を駆除する際に気を付けたいポイントを3つご紹介します。
1. におい・香りのあるものを使わない
クマバチは嗅覚が鋭く、においや香りのあるものを身につけているといたずらに刺激してしまう可能性があります。
クマバチの駆除を行う際は、香水や香りのある整髪料、ボディクリームなどを使わないようにしましょう。
2. 風が強い日は避ける
風があると、殺虫スプレーの薬剤があちこちに散らばってしまい、うまく巣穴の奥に噴射できない可能性があります。
巣穴から出てきたクマバチに狙いを定めるのも難しくなりますので、できれば無風or微風の日に駆除を決行しましょう。
3. 日中の駆除は避ける
クマバチは日中に活動するため、昼間に駆除しようとすると、抵抗が強くなります。
逆に、日没後は活動が鈍り、巣穴で大人しくしていますので、クマバチの巣の駆除は夕方以降、暗い時間帯に行いましょう。
クマバチの巣の駆除業者の選び方
クマバチの巣の駆除は自力でも行えますが、メスのクマバチに襲われるリスクや、成虫・幼虫・卵の駆除漏れなどを考えると、専門の駆除業者に依頼した方が安心です。
クマバチの駆除業者は全国各地にいますが、実績や技術、料金体系がそれぞれ異なりますので、信頼できる良心的な業者を選びましょう。
ここでは、クマバチの駆除業者を選ぶときにチェックしたいポイントを3つご紹介します。
1. 料金の内訳をチェック
クマバチの駆除にかかる料金は、巣を作られた場所や規模によって異なります。
そのため、くわしい料金を知るためには見積もりを取る必要がありますが、中には「作業一式」など、内訳があいまいな見積書を出してくる業者もいます。
良心的な業者なら、素人でもわかりやすい見積書を提出したうえで、作業内容を丁寧に説明してくれますので、見積書の内容はしっかりチェックしておきましょう。
2. 保証内容をチェック
クマバチの巣を丁寧に駆除したつもりでも、場合によっては同じ場所に巣を作られる可能性があります。
駆除業者によっては、作業完了後、一定期間内に同じ場所(あるいは数m圏内)にクマバチの巣が再発した場合、無料で駆除を行ってくれる保証制度を導入しているところもあります。
保証の有無や保障期間の長さは業者によって異なりますので、再発が不安な方は保証内容も確認しておきましょう。
3. 実績や対応をチェック
クマバチの巣の駆除に対する実績や経験は業者によって大きく異なります。実績や経験の浅い業者に依頼すると、作業が甘くて巣が再発したり、建物に余計な傷をつけられたりするリスクが高くなります。また、対応の悪い業者に当たると、駆除をお願いするときに不快な思いをしたり、駆除にあたっての要望を無視されたりする可能性もあります。
実績は業者のホームページなどに記載されていますが、対応の良さは実際に接してみないとわかりませんので、見積もりを依頼するときにあれこれ質問して対応の良し悪しを確かめてみるとよいでしょう。
まとめ
クマバチは大きい体や羽音とは裏腹に、性格は温厚で、何もしなければ人を襲ってくることはありません。ただ、クマバチの巣は建物の基礎部分に穴を開けて作られるので、放っておくと家屋の強度が大幅に低下してしまいます。クマバチの巣を見つけたら、なるべく早めに駆除し、建物への被害を最小限に防ぐようにしましょう。
クマバチの巣は、体を防護すれば自分で駆除することも可能ですが、スピードや確実性、安全性を求めるのなら、信頼できる駆除業者に依頼することをおすすめします。