もしもハチに刺されてしまったら
ハチに刺された際、毒を絞りだしたり、昔からハチに刺された場合は、こうすべきといった自己処理や民間療法が行われる事が少なくありません。これらの場合、屋外や家庭内にあるもので行われる事が多く、その結果、確実な効果を期待できないだけではなく、刺傷部から細菌が入ってしまう危険性があります。
目次
自己処理と民間療法について
では、どんな自己処理・民間療法に効果があるのか?反対に効果がないのか?説明したいと思います。
1 毒を絞りだす
これは正しい方法となります。毒を絞りだす方法としては、刺されてすぐ、自分の指や爪を使って刺傷部を強く挟み毒を絞りだします。可能であれば、専用の毒抜き器で行うことが最適ですが、身近にない場合がほとんどです。その代わりとして爪や指を利用します。ただし、刺傷部を直接触らないように注意することが大切で、触ったり、こすったりしてしまうと細菌が入り込んでしまう可能性があります。
2 水で洗う
これは正しい方法となります。ハチ毒は水に溶ける性質があります。近くに水道や綺麗な小川などがあれば、その水を利用し数分間、刺傷部を洗い流します。
3 アンモニア水・尿を塗る
これは間違った方法です。昔からハチに刺された場合は、アンモニアがよく効くと言われてきましたが、これは大きな間違いです。ハチ毒と中和させるため、アンモニア水が良いという考えで言われて来た事ですが、実際、ハチ毒の成分は複雑で、アンモニア水で中和させる事など出来ない事がわかっています。反対にアンモニア水を使用すると皮膚炎になってしまう可能性もあり、絶対にお勧めできない方法です。もちろん、尿においても、不潔なだけで何の意味もありません。
4 モチ草・ワラビの汁・玉ねぎの汁・アロエの汁などを塗る
これは正しくもなく間違いでもなく△の方法となります。地方によって、ハチに刺された時は、モチ草が良いとかアロエが良いといった言い伝えがあります。その為、林業の人などは昔から、このようなものを常備薬として持ち歩いている人も少なくありません。これらを塗る事で痛みや腫れが和らぐと言われていますが、誰にでも効果があるというものではなく、いずれにしても、あまりお勧めできない方法となっています。
5 ハチ入り焼酎などを塗る
これは間違った方法となります。信州の山間部などで行われている民間療法。スズメバチを焼酎などに漬け込み、その液を傷口に塗る方法となります。常用している人の中には、痛みや腫れがなくなるといった効果を実感している人もいるものの、全く効果がないという人も多く、お勧めできない方法となります。
以上のように民間療法の場合、確実な効果が期待できないだけではなく、傷口を悪化させてしまう場合もあり、注意が必要です。
ハチに刺された際の適切な緊急自己処置方法とは
- ポイズンリムーバー、もしくは、指や爪で刺傷部をつかみ、毒を強く絞りだす。
- 水道水や綺麗な水で刺傷部を冷やしながら洗い流す。
- 抗ヒスタミン軟膏・ステロイド軟膏などを刺傷部に塗る。
- 刺傷部の痛みや腫れ以外にめまいなどの症状が現れた場合は、すぐに医療機関に受診する
以上4点となります。
野外でハチに刺され全身症状やショック状態が起きた場合、医療機関への受診が遅くなってしまう事が考えられます。その結果、かなり危険な状況に陥る事もあります。そのような事を防ぐためにも、野外活動の基本として単独行動はとらない。その上で、万が一に備え、引率する人や保健担当者は、最低限の応急処置方法と市販のスプレー式殺虫剤などを準備しておく事が大切です。また、常に連絡が取れる携帯電話も携帯しておく必要があります。
また、ハチ毒アレルギーの人は必ず家族や同行者に伝えておく事が基本となります。ハチ毒アレルギーの場合、ハチに刺された時点で意識を失う可能性がある為です。その他にも、誰にでも自分がハチ毒アレルギーである事がわかるカードなどを見に付けておくほか、主治医に相談し薬を携帯しておくとより安心です。
もし、ハチに刺され重傷者が出た場合は、すぐに本人を安静にさせ、一刻も早く近くの医療機関に連れて行き適切な処置を受けさせることが必要となります。その際、歩かせる事が危険となる為、周りの人の手助けが必要になります。
【参考文献】
藤丸篤夫著『ハチハンドブック』(文一総合出版)
小川原辰雄著『人を襲うハチ』(山と渓谷社)
松浦誠著『人を襲うハチ』(北海道大学図書刊行会)