ドロバチの生態や危険性・巣の駆除方法・注意点を紹介
家のまわりやベランダなどに、いつの間にか泥の塊ができていた…という経験をしたことはありませんか。
単なる泥汚れのように見えますが、表面に穴が空いている場合は、ドロバチに巣を作られた可能性があります。知らずに掃除しようとすると、中からドロバチが出てきて攻撃される可能性がありますので、十分な注意が必要です。
今回は、ドロバチの生態や主な種類、危険性などの基礎知識とともに、巣の見分け方や駆除の方法、注意点についてくわしく解説します。
目次
ドロバチはどんな見た目か
ドロバチは、スズメバチ科ドロバチ亜科に属する昆虫の総称です。ドロバチの見た目は、後述する種類によって多少の違いはありますが、黒い体に黄色い線が入っているところが特徴です。
シルエットはアシナガバチに似ていますが、黒よりも黄色が目立つアシナガバチに対し、ドロバチは黒色の面積が大きいので、見分けるのは比較的簡単です。体長も種類によって異なりますが、小さなものは15mm前後、大きなものは30mm程度の体長を有しています。
ドロバチの主な種類
ドロバチの種類は複数あり、それぞれ体のサイズや巣の作り方などに違いがあります。
ここでは、ドロバチの主な種類とその特徴をご紹介します。
1. スズバチ
体長18~30mmほどのドロバチで、体にオレンジ色の模様があります。
泥を使って木の枝などに丸い鈴のような巣を作る習性があります。蝶や蛾を食し、捕らえた獲物を巣に詰め込んで卵を産みます。
2. ヤマトフタスジスズバチ
体長8~18mmほどのドロバチで、細長いシルエットが特徴です。
竹筒や枯れ枝のすき間などに巣を作る習性があり、植物の葉をかみ砕いたもので仕切りを作ります。幼虫に与えるために、蛾の幼虫を狩って巣に蓄えます。
3. ミカドトックリバチ
体長13mm前後のドロバチで、腹部に黄色い2本線が入っているところが特徴です。
家の外壁や枯草の茎などに、泥をこねてトックリ型の巣を作ることが名前の由来です。巣を作ったら卵を1つだけ産み、そこに幼虫の餌となる青虫を大量に詰め込んでフタをします。
4. キボシトックリバチ
体長13~17mm程度のドロバチで、腹部に丸くて黄色い斑紋が見られます。
ミカドトックリバチと同じく、泥でトックリに似た形をした巣を作り、蛾の幼虫を詰め込んでフタをします。
5. オオフタオビドロバチ
体長10~21mmほどのドロバチで、腹部に黄色い帯のような線がついています。
竹筒などに営巣し、泥を材料にした仕切りを設けるところが特徴です。
成虫の活動期間は5~10月で、幼虫のまま越冬する性質があります。
ドロバチの生態について
ドロバチの活動時期は種類によって若干の差はありますが、おおむね初夏~秋にかけて活発になります。
名前の通り、泥を原料にして巣を作る種が多いですが、泥そのものをこねて巣作りするタイプと、竹筒や木の穴に泥で仕切りを作るタイプの2通りがあります。
巣を作って卵を産んだ後、ドロバチは幼虫のエサとなる蝶や蛾の幼虫を捕獲しにいきます。獲物はその場では殺さず、麻酔で動けなくしてから巣に運びます。
この作業を何度も繰り返し、卵を産み付けた巣の中をエサでいっぱいにしたら、入口にフタをします。
やがて巣穴で卵が孵ると、幼虫は母バチが運んだエサを食べて成長し、やがて巣を離れていきます。
この間、母バチが巣穴に戻ってくることはないため、親子間の関わりをほとんど持たないところが特徴です。
他のハチと同じく、昼に動き回り、日没後は活動を停止する習性があります。
ドロバチの危険性について
ドロバチには、獲物を弱らせるための毒針が備わっていますが、見た目が似ているアシナガバチと比べると毒性はそれほど強くありません。
もともとドロバチは温厚な性格をしているので、身の危険を感じない限り、人を襲撃することはないでしょう。
ただ、ドロバチや巣に危害を加えると、毒針で反撃してくるので要注意。見かけたら余計なちょっかいを出さず、放っておくのが無難です。
もしドロバチに刺されてしまった場合は、患部を水で洗い流し、針が残っている場合はピンセットなどで抜き取ります。あとは患部を冷湿布などで冷やしておけば、徐々に痛みや腫れは収まっていくでしょう。
ただ、腫れや痛みがひどい場合や、気になる症状が現れた場合は、すみやかに医療機関を受診することが大切です。
ドロバチの巣の見分け方・つくられやすい場所
ドロバチの巣は、よくある六角形を並べた「ハニカム型」のハチの巣とは異なり、一見したところはただの泥の塊にしか見えません。
そのため、泥や土の塊と見分けがつきにくいのですが、よく見るとドロバチが出入りするための穴が開いているので、家の周辺に見慣れない泥の塊を見つけたら、穴が開いていないかどうかチェックしてみましょう。
なお、ドロバチの種類によっては竹筒の中に巣を作ることもあるので、家の周辺に竹がある場合は要注意です。
ドロバチが巣を作りやすい場所
ドロバチは自然界だけでなく、住宅街でも巣を作る習性があります。
自然界の場合は、木の枝や植物の枯れた茎、木の幹にできた穴やくぼみなどに巣を作るケースが多いようです。
一方、住宅街の場合は、ベランダや軒下、床下、外壁のくぼみ、屋根裏などに営巣するパターンがよく見られます。
ドロバチの巣の駆除方法
ドロバチの成虫は、巣作りの後はその場を立ち去って二度と戻りませんし、巣穴で孵化した幼虫も、エサを食べて成長したらやがて巣立っていきます。
いくらドロバチが温厚な性格をしていても、巣に攻撃すると襲ってきますので、特別な事情がなければ無理に駆除せず、そのまま放置するのが無難です。
ただ、自宅の庭やベランダなどに巣を作られ、小さな子供がいたずらしそうで不安…という場合は、以下のものを準備し、巣の駆除を行いましょう。
1. 防護服
2. 軍手+ゴム手袋
3. 長靴
4. ゴーグル
5. タオル
6. 帽子
7. 赤色のセロファンを貼った懐中時計
8. ゴミ袋
9. ほうき+ちりとり
10. 金属ヘラ
11. 殺虫スプレー
1~6までは、巣を攻撃されたドロバチが反撃した時に備えるための防具です。
また、ドロバチの駆除は日没後に行うので7の照明が必要ですが、光を当ててハチを刺激すると攻撃が激化する可能性がありますので、ハチが認識しにくい赤いセロファンを事前に貼っておきましょう。
具体的な駆除の手順ですが、まずは殺虫スプレーをかまえた状態で、ドロバチの巣に近づいていきます。
ドロバチは昼行性なので、夜間は巣穴でじっとしていますが、もし出てきたら即座に殺虫スプレーを吹きかけます。ドロバチが外に出てこなくなったら、巣穴の中に殺虫スプレーを15秒ほど噴射します。
数分経ったら、金属ヘラを使って根元から巣を除去しましょう。ドロバチの死骸や除去した巣はゴミ袋に入れて処分すればOKです。
ドロバチの巣を駆除する際の注意点
ドロバチの巣を自分で駆除する際に気を付けたいポイントを2つご紹介します。
1. 駆除のタイミングは成虫が立ち去った後がおすすめ
ドロバチの成虫は秋になると巣作りを開始し、卵を産んだ後、エサを詰めて入口をふさぎ、立ち去っていきます。
卵は9~10月頃に孵化しますが、羽化して巣立つのは冬を越え、春を迎えた頃です。つまり、母バチがエサを蓄えて立ち去った後なら、安全に巣に近付き、駆除することが可能となります。
ただ、ドロバチの成虫は、一度でエサを運び終えて立ち去っていくタイプと、複数回に分けてエサを蓄えて立ち去っていくタイプの2種類に分類されます。
後者の場合、いなくなったと思ったら、実は巣穴にひそんでいたという可能性もありますので、必ず防護服を着用して駆除に臨みましょう。
2. オオスズメバチの巣と間違えないよう注意!
土や泥で巣を作るのはドロバチだけでなく、実はオオスズメバチも土の中や地中に似たような巣を作ることで知られています。
基本的に単独で行動し、性格も温厚なドロバチとは異なり、オオスズメバチは群れをなして行動し、巣に近づくものを一斉に攻撃する習性があります。
性格も凶暴で、特に危害を加えるつもりはなくても、近寄っただけで襲いかかられるおそれがありますので、素人が駆除するのは大変危険です。
オオスズメバチの巣は土中に作られるので、ベランダや軒下といった土の外に作られるドロバチとの見分けは比較的容易です。しかし、正しい知識を持っていないとオオスズメバチの巣に近づいて被害を受けるおそれがあるので注意しましょう。
ドロバチの巣の駆除は業者がおすすめ
ドロバチの巣は自分で駆除することも可能ですが、成虫がいるときに作業を行うと攻撃される可能性がありますし、巣に使われた土や泥が乾燥するときれいに除去できないことがあります。
ベランダや軒下に巣を作られた場合、足元が不安定な状態で駆除作業を行うと転落の危険性もあります。
また、専門業者ならハチごとの習性をよく理解しているので、より迅速かつ確実に巣を駆除できるのも大きなメリットです。
費用はかかりますが、ドロバチの巣を駆除したいのなら、専門業者に依頼することをおすすめします。
ドロバチの巣の駆除を依頼する業者の選び方
ドロバチの巣の駆除を依頼する業者の選び方を3つのポイントにわけて説明します。
1. 無料で現地調査・見積もりしてくれるか
ドロバチの巣の駆除にどのくらいの費用がかかるかは、巣のある場所や巣の規模によって異なります。
くわしい費用を知るためには現地調査したうえで見積もりを作成してもらう必要がありますが、業者によっては「出張費」という名目で費用を請求されるところもあります。
ドロバチの巣の駆除にもそれなりの費用がかかりますので、コストを節約したいのなら無料で現地調査・見積もりしてくれる業者を選びましょう。
2. アフターフォローがしっかりしているか
ドロバチは基本的に巣作りを終えた後、成虫が戻ってくることはありませんが、巣作りが完了する前に駆除した場合、成虫が元の場所に新たな巣を作る可能性があります。
一度駆除しても再発するリスクはゼロではありませんので、一定期間、無料で保証してくれるサービスのある業者を選んだ方が安心です。
3. 自宅のエリアに対応しているか
ドロバチ駆除業者は、全国展開しているところと、地域に根ざしたサービスを提供しているところの2つに分類されます。後者の場合、きめ細かなサービスを期待できますが、対応エリアが狭いため、自宅の場所によっては断れてしまうこともあります。全国展開している業者なら大半のエリアはカバーしていますが、事業所が近場にない場合、対応が遅れることもあります。
まずは自宅エリアに対応している業者を絞り、その中から予算や対応スピードのニーズに合ったところを選択しましょう。
まとめ
ドロバチはハチの中でも温厚な性格なので、こちらから危害を加えなければ刺されたり、襲われたりする心配はほとんどありません。しかし、ドロバチ自身を攻撃したり、巣を駆除しようとしたりすると、一転して攻撃してくるおそれがあります。
成虫が立ち去った頃合いを見計らって、自分で巣を駆除することも可能ですが、安心・確実に巣を取り除きたいのなら、専門業者に駆除を依頼することをおすすめします。